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ら抜き言葉

「ら抜き言葉」と呼ばれる表現がしばしば用いられます。「ら抜き言葉」とは、

「見る」のような上一段活用動詞、「食べる」のような下一段活用動詞、また「来る」のようなカ変動詞の可能表現としてそれぞれ「見れる」「食べれる」「来れる」と綴られるもの(Wikipedia:日本語の乱れ)
のように、文法的な活用では必要なはずの「ら」の文字を含んでいない言葉のことです。

これらの表現がなぜ生まれたかについて考えてみると、(1)地方の方言(北陸・近畿・中部)では可能表現は元来「ら抜き」だった、(2)可能・受け身・敬語の区別がつかないため、標準語圏の人々が地方方言を取り入れた、といった流れであったものと考えられます。「ら抜き」言葉によって、可能・受け身・敬語の区別がつくようになりますので、現代標準語に見られる曖昧さは少なくなります。一方で、「ら抜き」表現によって困ることはほとんどありません。

つまり、「ら抜き」表現は非常に合理的な変化であり、次世代の「正しい」日本語となるべき性質を有しています。ただし、言葉の変化でもっとも困るのは、用いる表現の意味が話者・聞き手の世代によって変わってしまうことですから、幅広い年齢層に読まれる文書等ではまだ利用は控えた方が賢明でしょう(もっとも、高齢者のほうが「ら抜き」言葉には抵抗が少ないので、むしろ中年層への配慮ということになりますが)。

なお、この「ら抜き言葉」は現在の標準語文法と異なっているので誤りだとする意見もありますが、言葉は常に変化するものですし、合理的な変化であれば容認されるべきです。そして何より、文法というものは自然科学の物理法則と同様「実際に用いられている言葉を観察・分類し、一般化するルール」ですから、実際に用いられている言葉が変わったのに文法規則が変わっていないのであれば、それは文法自体が誤っている、と考えるほうが自然ではないでしょうか。

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コメント (3)

「ら」抜き言葉などは容認できませんよ。
 私の知り合いのイギリス人も肩をすくめて苦笑いしております。曰く「日本人は教養がないねえ。」

wassy:

コメントありがとうございます。でも、本文読まれました?

ら抜き言葉は、もともと明治時代に標準語が作られるまで全国各地でそれなりに使われていた言葉づかいです。したがって、日本語のルーツとしては現在国語として教えられている日本語より遙かに歴史があり、正統なものです。

そもそも、教養とは何でしょう?現代の歴史の浅い教育内容だけをとって教養としているならそれはおかしな話でしょう。上から押しつけられた新しいものだけを使いこなすこと?? 英語だっていろんな品詞の格を落としてできた省略型言語なのに、ら抜きだけを指して教養が足りないなどとうそぶかれたくないものです。

hachikun:

興味深い記事でした。ありがとうございます。

そうそう、むしろ「ら抜き」のほうが古いですね。
ちなみに私の故郷では「食べれる」というと「食べることができる」で、「食べられる」というとこっちが食われる事になってしまいます。
標準語にもこのニュアンスはたしかにありますが、こんな極端に違う意味を同じ言葉で表すほうがよほど気持ち悪いですし、生理的にも受け入れられるものではありません。
こういう語彙が存在するのは「コミュニケーションを円滑にするための共通語」として制定された標準語の目的を考えると、残念ですが欠陥であると個人的には認識しております。

標準語で会話する時や文章を綴る時に限っては「食べられる」と言わず「食べることができる」などと意図的に言い替えたり文脈そのものを変えます。大変面倒ですが、変な人に脊髄反射されるほうが時間も手間もかかり不毛ですから。
もちろん、地元の方言で会話する場合はそんな制約は特に設けておりません。父や母から教わったまま、子供の頃から使ってきたままに自然にお話するのみです。

英語に関しては同意見です。
では。

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2002年05月07日 00:00に投稿されたエントリーのページです。

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