« ら抜き言葉 | メイン | ひらがなのおんぱれーど 〜仮名漢字交じり書きの弊害〜 »

「不具合」は不適合?

「不具合がありましたら、お客様カスタマーセンターへご連絡ください」という表記を、マニュアル等でよく見かけます。ところが、このような表現は差別表現だと言う人もいます。「不具」というのが差別表現の一つで、これを表記するのはけしからん、と。

もちろん、「不具合」という表記は否定の「不」と名詞「具合」の結合ですから、元々は差別表現ではありませんし、ましてマニュアルがそうしたことを意識して書いているはずがありません。でも、それを差別表現だと捉える人も一部にいるようです。そのせいか、最近は「不具合がありましたら」とは書かず、「不適格な箇所がありましたら」「不適合な箇所がありましたら」と書くケースがあります。君子危うきには近寄らず、ということでしょうか。

ただし、これは一種の過剰反応でしょう。どんな言葉でも受け取り方は人によって違いますが、しかし言葉そのものには罪はありません。また、場面や言い方によっても意味は変わります。同じバカでも「馬鹿野郎!」と怒鳴りつけるのと「バカ♥」と甘えるのとではまったく正反対の意味となるように、どんな意図で言葉を用いるかによって差別用語かどうかが決まってきます。今のところ「不具合」という言葉は「具合が悪い」とか「製品などに含まれる不良品」のことを指す場合が多く、人間に対して用いられる場面は少ないでしょうから、この言葉は直ちに差別用語とはなりません。

ただし、企業の法務部門では話が変わるでしょう。特に、ISO系の認定を取得する場合には、マニュアル等に「不具合」という言葉が含まれると不適格とみなされることもあるようです。従って、無用のリスクを減らすためにも、言い換えができるなら公の文書では使わないほうが賢明でしょう。また、ニュアンスや語意を無視して言葉尻のみをあげつらって差別に抗議する人には正論を返しても無駄ですから、抗議された場合は大人しくこっそり表現を変えるのも大人の対応かと思われます。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://washitake.com/jp/mt-tb.cgi/4

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

About

2002年05月07日 00:00に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「ら抜き言葉」です。

次の投稿は「ひらがなのおんぱれーど 〜仮名漢字交じり書きの弊害〜」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Creative Commons License
このブログは、次のライセンスで保護されています。 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス.