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Public Diary


2012-02-06

[MBA] なぜMBAか

MBAのエッセーでも頻出トピックたる「なぜMBAか」。エッセー作成段階ではいろいろ野心的なことも考えたりはするのですが、半年ほどMBAの基礎の授業を受講して思うところを簡単にまとめてみます。

イリノイ大学のMBAプログラムは、2年間のうち前半1年間を必修の基礎科目のための1年とし、マーケティングやファイナンスなどの授業に充てています。一部の科目は基礎的すぎて、若干のクレームも出ていますが、様々なバックグラウンドを持つ学生が同じレベルで議論するためのベース作りとしては結構良いかなと思っています。こうした基礎科目の授業を受けた範囲内での感想です。

過去事例の習得

今まで数多くの企業が生まれ、成長し、そして市場から退場していきました。その中から、様々な事例を集め、分析し、教えてくれるのがMBAのコースです。もちろん、知識として他社の事例を学んだからといって、必ずしも自社の実例で成功が約束されるということはありませんが、過去の敗者の失敗を避け成功者の体験をなぞることで、成功の確率は高まるでしょう。一から試行錯誤して組織を作り上げるより、過去事例を学び、なるべく最適なスタート位置から始める方がずっと効率的です。特に、税金で賄われている行政機関は、試行錯誤を減らし、効率的な組織である必要があるでしょう。

人が「会社とは…」と言うとき、多くの場合、思い浮かべるのは自分が在籍したことのある会社です。営業を体験した人なら、多少は幅広い「常識」を持っているでしょうが、それでも統計上有意といえるだけの実例を経験することは難しいでしょう。MBAでは「会社」というものを、より一般的に学ぶことができます。公務員には、「民間の常識」が求められています。自らが直接接触する機会のある企業だけでなく、世界の様々な業界の企業がどのように運営され、どのような倫理を持ち、どのようなインセンティブを持っているかを俯瞰するのは、企業というものを客観的に知るのに役立ちます。

公共政策学などでは、いかに政策を運営していくかについて学ぶことができますが、その政策の運営主体である行政機関をどのようにマネジメントすべきかについてはあまり主体的に学びません。たとえば、大阪府と大阪市で二重行政と呼ばれる状態が発生しているとき、それをどのように解消すればいいのか?こうした問題を、組織のマネジメントといった観点から教えてくれるのがMBAです。組織全体の予算を一律に数%ずつ削減するよりも、ボトルネックとなっている工程にむしろ予算を付けることで全体が効率化され、結果として総予算が削減できることを教えてくれたりします。

決してすべての公務員がMBAを学ぶべきとは思いませんが、毎年100人程度が留学する中で数人くらいはMBA留学すべきではないかと考える次第です。なおMBAは学費が高いと言われますが、イリノイ大学の場合、他コースが年間220万~270万円でMBAは年間254万円ですから、特別MBAの学費が高いということはありません。

マーケティングの視点

うちの学校はマーケティング(とファイナンス)の分野に力を入れていることもあるのですが、やはりマーケティングの視点は重要だなと思います。行政機関にも様々な機能がありますが、その中でも国民とのコミュニケーションには、マーケティングから学ぶところは多いです。

マーケティングを「物を売ること」と誤解する人は多いですが、MBAにおけるマーケティングは、どんな消費者が何を求めているかを分析し、そのニーズにあわせてコミュニケーションしていくことです。たとえば消費者のセグメント化やブランド戦略といった考え方は、国民を「国民」としてひとくくりにせず、一人一人の市民が必要としているコミュニケーションを適切に行う上で非常に重要でしょう。実際、マーケティングの上手い電通や博報堂といった会社をうまく使うようになってきた文部科学省などの取り組みは、マーケティングが行政においても有効であることの証左でしょう。

したがって、マーケティングを商業活動の一環としてだけ捉えるのではなく、そういった民間における「知恵」を学ぶ場としてMBAコースは有効なのではないかと思います。

英語の上達(おまけ)

MBAのコースワークは、結構ハードです。授業ももっぱらケース・ディスカッションですし、グループワークも多い。プレゼンする機会もたくさんありますし、宿題や試験はいかにプロフェッショナルな英文を書けるかで採点されます。こういう環境なので、他の専攻に比べて英語が上達します。もちろん、それだけMBAの入学要件として求められる英語能力も高くなっています。ただ、一般的に、MBAに求められるTOEFLの点数は、他のコースで求められる点数とそれほど差はありませんし、狙ってみる価値はあるでしょう。

とはいえ、英語だけのために高い授業料を払ってMBA留学するのは無駄と言わざるを得ません。英語の上達だけなら駅前で留学していれば十分です。英語の上達は、あくまでオマケです。

留学するべきなのか

もちろん、そもそも海外ではなく国内ではダメなのかとか、公務員の留学制度自体の存在を問う声はあるでしょう。ただ、上司に突然「お前は英語ができるからこの制度に応募しろ、来年から留学だ」と言われた人が専攻を考えるとき、MBAも一つの選択肢として結構前向きに考えて良いのではないかと思うのです。


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