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Public Diary


2012-01-03

[MBA] MBA出願エッセイ

2012年になりました。本年もどうぞよろしくお願いします。

アメリカの大学の冬休みは本当に長く、多くの学生は実家に帰ったり旅行に出かけたりするのですが、私の場合は諸事情で北米から出られないことになっています(いざというときは出られるんですけどね)。アメリカ国内も学生時代や転職の狭間でそれなりに旅行してますし、この冬休みはのんびりと自宅周辺で過ごしております。

そんな自分が昨年の今頃何をしていたのかなぁと思い返すと、締め切り直前のMBA出願用エッセイを正月返上で書き上げていました。それもこれも自分のタイムマネジメント不足が原因とは言えるのですが、しかしそれにしてもなかなか仕事をしながらのエッセイ書きというのも大変なものです。特に年の瀬はいわゆる年末進行な企業もあるでしょうし、そんな中、たとえば夜1時・2時に終電やタクシーで帰宅してからエッセイを書くのもなかなか現実的ではなく、結局週末や年末年始を使わざるを得ないわけですよね。

そんなわけで季節柄、エッセイの書き方について、渡米前に(というか1年前の出願時に)知っていればなぁということを書いてみます。

エッセイといえば、こちらに来て一番に学んだのはイントロダクションの書き方を含めたエッセイ全体の構造です。特に、イントロダクションは、エッセイの全体的な方向性を左右するので本来はとても重要なパートです。イントロダクションで特に重要なのは"thesis statement"と呼ばれる文です。これがエッセイや論文では非常に大きな意味を持ちますが、日本では聞いたことがありませんでした。僕は卒論を英語で書かされましたが、この論文を参考に同じように書けと言われただけで、論文の構造についてのちゃんとした説明は受けなかった。TOEFLの予備校のようなものにも通って「テンプレート」を教えてもらったけど、thesis statement の書き方のようなものは聞かなかった。でも、アメリカでは高校の英語の授業で教えてるんですよね。つまり thesis statement を知らない日本人の英語エッセイは、構造だけで言うと、アメリカ人の高校生の宿題以下ってことなんです。

Thesis statement は、エッセイの「結論」を一文にまとめたようなもので、通常、イントロダクションの最後に置かれます。ライティングのオンライン講座には定評のあるパデュー大学の資料(http://owl.english.purdue.edu/owl/resource/545/1/)あたりを読んでいただくのが一番わかりやすいと思いますが、議論可能である(arguable)ことと、ピンポイントであること(specific)ことが重要です。そして、広いバックグラウンドの導入から入ってこのピンポイントなthesis statementにつなげていくことが重要です。こうして、イントロダクションをしっかり作るだけで、相当印象が変わってきます。

Thesis statement は通常、「(1)及び(2)の観点から、(A)である」という構造を持ちます。たとえば、パデュー大学のサイトでは

High school graduates should be required to take a year off to pursue community service projects before entering college in order to increase their maturity and global awareness.

という例文を出していますが、「(A)高校を卒業して大学に入るまでの間に、1年間のコミュニティサービスプロジェクトに参加すべき」という主文に対して「(1)成熟するため、および(2)グローバルな知見を高めるため」という目的部分が続いています。そして、エッセイの本文の部分は、(1)及び(2)について議論します。thesis statementでは、"in order to" や "in view of" などの接続句を用いてこれらの部分をつなげるとともに、大まかな本文部分の構造を示唆するのが良いとされています。

Thesis statementそのものはとても簡単です。単なるテンプレートじゃないかと思われるかも知れませんが、アメリカの大学では(特にアカデミックな雰囲気を重んじる大学では)この作法を守っているかどうかというのが非常に重要です。卒論や修論を書くときに、指導教官から文献の引用スタイルについて細かく直された方は多いと思いますが、あれと同じようなものです。もちろん作法を守れば合格ということではありませんが、このような作法に従うのは一種の前提となっており、こうした作法を守らないエッセイはよほどインパクトが強くなければ本文に入る前に門前払いされてしまう可能性すら潜んでいます。よく日本のMBA予備校で一般人にはあり得ないような体験に基づくエッセイを書くことが求められますが、それは構造を無視しているから内容で勝負せざるを得ないということなんだと思います。アメリカ人のMBA受験はもっとおおらかで、マクドナルドのバイトでこんなことを学んだとか、その程度のリーダーシップだったりします。MBAの受験では、本来、世界をひっくり返すような体験は求められていないのです。むしろ、他の人が気づかないような毎日の出来事にきっかけを見いだせる人が求められているのではないかと思うのです。

友人に「テンプレートは嫌いなのでそういうのは使いたくない」という人もいましたが、これはテンプレートというよりも作法とも言うべきものです。論文のリファレンスにA.P.A.スタイルを用いるときに「著者(年)」を使うのが一般常識であるのと同じように、第1段落はthesis statementで終わるもの。thesis statementのない論文でもよほどイントロがしっかりしていれば読まれるでしょうけど、よほど英語での文才がない限りは、thesis statementを利用するのが無難です。自分でもthesis statementを意識するようになってくると、これが無いだけで随分と印象が変わってくるのが面白いです。

参考文献

シカゴ近郊の日系書店で英文エッセイの書き方について日本語で解説してある書籍を探してみましたが、ないようです。以下のリンクが参考になるでしょう。

追記

Thesis statementを用いた構造をしっかり意識すれば、英文エッセイはそれほど難しく考えなくても、ある程度は論理的に作ることができます。有名なStanford大学のMBAエッセイ課題 "What matters to you most?" については、以下のような考え方もできるでしょう。

  1. 過去の印象深かった出来事を思い出す
    • 「たとえば○○への旅行かなぁ」(*)
  2. その理由を3つほど思い浮かべる
    • 「普段の生活では知り合うことの無かった友人ができた、とか」(A)
    • 「新しい土地での習慣を知ることができた、とか」(B)
    • 「体力作りになった、とか」(C)
  3. Thesis statement を作る
    • 「○○への旅行(*)は、友人を増やし(A)、日本の地方についての新しい知識を与え(B)、さらに体力的な基礎を築く(C)という点で、非常に有益だった」
  4. Thesis statement へとつながるイントロダクションを作る
    • 一生の中で様々な出会いがあるが~云々。
    • いや !"#$% の方が重要だという人もいるだろう云々。
    • しかし、私にとっては、○○への旅行(*)こそが、友人を増やし(A)、日本の地方についての新しい知識を与え(B)、さらに体力的な基礎を築く(C)という点で、非常に有益だった。
  5. 本論よりも先に結論部分を書いてみる
    • 「以上で見てきたように、○○への旅行は~云々」
    • 「これからグローバルな視座が求められていく中で、この体験は~云々」
    • 「日本人すら知らない○○であるが、外国人にはぜひ○○を~云々」
  6. 本論部分を作る。(各1パラグラフ)
    • 「友人を増やすということについて~」
    • 「日本の地域を知ることは~」
    • 「体力的な基礎は~」

もちろん、論理的な流れであれば合格というものでもないでしょうから、上記のように考えれば必ず合格ということでもないでしょう。ただ、こういう構造を知らないがゆえにエッセイの印象を下げているということは多々あるものと思います。


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