2011-10-16
● [MBA] MBA501終了
いきなり終了のお知らせからですが、イリノイ大学のMBAプログラムでは、1年目は4学期制となっており、1学期(MBA 501)は10月下旬で終わってしまいます。せっかくアメリカで授業を受けているので、次学期であるMBA 502からは、その記憶が薄れないうちにメモを残してみようと思います。
同MBAプログラムでは、最初の1年間(MBA 501~504+505)は全科目が必修となっています。MBA 501では、以下の授業を受けました。
- Marketing(マーケティングI)
- Managerial Economics(経済学)
- Ethics and leadership(倫理学)
- Accountancy(会計学I)
- Data analysis(データ分析)
いずれも週に2時間×2コマずつ、計20時間となっています。本学では、週に20時間を超える授業は履修できないことになっていますが、留学生で英語スキルが一定レベル(TOEFL 108点相当だそうです)に達しない場合は、さらにESLのクラスに登録されることになります。
● [MBA] アメリカ生活
アメリカで生活を始めて3か月、とりあえず今のところ順調です。
特に最近はアメリカでも本物志向が高まっており、日本の食材は、結構ちゃんとしたものが簡単に手に入ります。もっとも、内陸部では毎日鮮魚をというわけにはいかず、寿司や刺身に限ってはどうしても入手手段が限られますが、まぁもともと日本でもそんなに毎日食べるような代物ではないですかね。
その他、酒類や食器、日用雑貨も日本の物が比較的流通しています。こちらでどうしても手に入らなくて、アメリカ旅行で通りがかった両親に手土産として持ってきてもらったのは、以下のようなもの。
- コンソメ(おなじみ味の素のもの。代替品は手に入ります)
- ガムテープ(ビニール素材のものは多いのですが、ガムテープだけは入手不可能です)
- A4の紙(専門店にはありそうですが)
- クリアフォルダ(こちらでは紙のフォルダが多く、「クリア」フォルダが見あたりません)
あと、キノコ類はどうしても種類が限定されてしまいますが、近くのスーパーでも椎茸や舞茸くらいは売っており、日常生活の上ではあまり困っておりません。
2011-10-17 MBA 502 Day 1
● [MBA][講義メモ][OTD] 組織論
- 組織とは何か
- 組織のセオリー
- セオリーの問題点
本日はオリエンテーション。
「(任意の)組織を表す絵を描け」と言われたら、どのような絵を描くでしょうか。一般的に、半分くらいの人は組織図を描くそうです。しかし、ほとんどの組織図は、組織がどのように細分化されているかを表すだけで、それぞれのパーツがどのように機能しているか、どのように連携しているか、どのようなビジョンに向かって組織が動いているか、といった情報を知らせてくれません。今日のクラスでは、世界地図に組織の拠点をプロットしたグループもいましたし、「ビジョン-労働の分割-相互依存」といったモデルを示したグループもいました。
このように、組織というものを説明しようとするときには、複数の考え方(セオリー)が存在しますが、どんな組織にも適用可能で組織のすべてを表現できる単一のセオリーは存在しません。このため、組織のセオリーを考える際には、複数のセオリーを組み合わせて考えるべき、とのことです。
ここで、3つの典型的な組織のとらえ方が紹介されました。
- Rational System としての組織
- 特定の目的のために存在し、効率を求めて動く組織
- Open System としての組織
- その環境の産物であり、環境に依存する組織
- Natural System としての組織
- 構成員がそれぞれ好きなことをしている組織
ほとんどの組織はどの性格も有していますが、たいていはどれか一つの性格が前面に出てくるようです。
● [MBA][講義メモ][PCOMM] プロフェッショナルコミュニケーション
本日はオリエンテーション。
どのMBAプログラムも、たいていプロフェッショナルコミュニケーション、ビジネスコミュニケーション、といった名称で、このような授業を提供しているそうです。それは、ビジネスとはコミュニケーションそのものであり、実に85%のリクルーターがコミュニケーション能力の高い学生を重要視しているから、だそうです。
この授業では、オーラル・ライティングの両方の能力向上を目標としていますが、今日はオリエンテーションということで、ライティングにおいて重要とされている Seven C's(7つのC)が紹介されました。
- Completeness (5W1Hを忘れない)
- Conciseness (重複を避け、回りくどい説明を避ける)
- Consideration (機械的に書かない、読むことによるbenefitを加える)
- Concreteness (具体的な事例や数字を用いる)
- Clarity (短くわかりやすい単語を用いる。専門用語を多用しない)
- Coutesy (正直に)
- Correctness (誤りがないよう確認する)
2011-10-18
● [MBA][講義メモ][MSP] オペレーションマネジメント
本日はオリエンテーション。
5人のチームで、タスクを分割して生産ラインを作ってみて、どのような問題点を見つけられるか、という実験をしました。
ボトルネックとなる行程に追加のリソースを割り当てるとか、工程管理をどのようにすればいいか、あるいは組織全体での戦略をどのように立てるか、こういったことを考える必要性を認識した上で、このMSPの授業はそういった点について解説していくよ、という説明。
● [MBA][講義メモ][ACCY] 会計学II
本日はオリエンテーションにつき、前期の会計学Iのおさらいです。
この授業では主に実際のケースに基づいた分析をしていくという例として、SECのホームページからアップル(AAPL)等の有価証券報告書等を検索、クラスで見ていくというデモンストレーションがありました。
● [MBA][講義メモ][PCOMM] ビジネスコミュニケーション
今日は、効果的なプレゼンテーションについての解説です。
PowerPointを使った効果的なプレゼンテーションの進め方については、日本でもよく研修が行われていたりしますが、こちらでは結構本格的に力が入れられています。7月に渡米してきてからまだ3ヶ月半ですが、この間にプレゼンの授業は5回くらい受けています。いずれも主たるポイントは同じですが、細かいところで新しいポイントが追加されており、この手の授業(というより研修?)を何度も繰り返し受けながら自分でもプレゼンをしていく、というのがプレゼン上手になるための一つの方法なのかも知れません。
(あとでもうちょっと書きます)
2011-10-19
● [MBA][講義メモ][OTD] ガバナンス
- Googleの「オーナーズ・マニュアル」
- 企業の「目的」とその決定
- 「ミッションステートメント」の存在理由
Googleは、2004年の新規株式公開(IPO)の際、"An Owner's Manual" for Google's Shareholders(Google株主のための「オーナーズ・マニュアル」)を公開しました。この「マニュアル」では、Googleは長期的な目標を重視しており、長期的な目標達成のためには短期的に損失を出すこともあるとし、その上で、投資家からの短期的なパフォーマンス追求には応じない、としています。つまり、17日の授業の用語でいえば、Googleは「環境」に応答するオープンなシステムではなく、自身の目的達成を追求するナチュラルなシステム、と言えるでしょう。
企業のガバナンスは、株主、役員、従業員により担われていますが、一般的な企業は株主と役員がその多くを担っています。一方、Googleでは従業員がより主体的にその役を担っているとも言えるでしょう。
ガバナンスの問題は、
- 最終的な目標・目的
- コントロールの体系
- 組織内組織間の協力関係
- 社会における組織の役割
のいずれかの共有不足・理解不足により起こることが多いため、これを防ぐためにも「ミッション・ステートメント」(Googleの場合は「オーナーズ・マニュアル」)が必要となってきます。ただし、ガバメントの考え方は時代(現代<=>1970年代)や場所(アメリカ<=>アジア)によって異なるだけでなく、法制度等の改正によって変わりますので、ミッション・ステートメントも随時見直しが必要となってきます。
2011-10-20
● [MBA][講義メモ][MSP] オペレーション戦略
オペレーション戦略の策定にあたっては、顧客視点が重要となります。プロセス改善にあたり「ムダ」を探すとき、顧客がそのプロセスへの対価を支払う必要性を認めないステップが「ムダ」なのであって、経営サイドの視点では「ムダ」は見つからないからです。
顧客視点に立つ際には、製品の Order Qualifiers (OQ) と Order Winners (OW) が何なのかを考える必要があります。
- OQ … 顧客が製品・サービスを検討するのに必要な基準
- OW … 顧客が競合する製品・サービスと区別してその製品を選択するための決め手となる指標。
時間が経つにつれ、新技術の浸透等により、OWはOQになっていきます。たとえば、携帯電話における「カメラ」は、かつてはカメラがあるだけで凄い=OWでしたが、今となっては当たり前の技術=OQになっています。また、競争の強い環境では、OWがOQになる時間は短くなります。
2011-10-24
● [MBA][講義メモ][OTD] 組織の拡大と縦割り化(1)
・ケース The Rise and Fall of the J. Peterman Company*1
The J. Peterman Companyは、1987年にJohn Peterman氏によって設立された衣料品通信販売の企業です。小規模な会社でしたが、少しずつ規模を大きくし、1997年頃には収拾が付かないくらいの規模になり、1999年1月、連邦法11章(チャプターイレブン)に基づく再生手続きを行いました。本ケースは、この経験に基づくPeterman氏自身のメモによるものです。
このケースを通じて、組織の拡大と成長により、
- 組織内調整の失敗
- 組織のカルチャー共有の不十分
といった問題が発生することを学びました。また、組織がどのようにして拡大(肥大化)を求めていくのか、といった一例を観察しました。その上で、結論として、ガバナンスがいかに重要で、そのようにビジョンを共有していくべきか、といったことについて論じました。
同様の例として、スターバックス社が、創立者の退陣とほぼ同時期に店舗数を急激に増やした結果イメージが低下してしまい、その際に創立者がどのように指揮を執ったのか、というケース*2も紹介されました。
2011-10-25
● [MBA][講義メモ][MSP] プロセスフローとプロセスの計量
柔軟性・カスタマイズ・高品質の追求と、大量生産・コスト削減は、なかなか両立できません。そのバランス具合によって、プロセスフローは以下のように大きく4つに分けることができ、それぞれ一定程度何かが犠牲になっています。
- ジョブショップと呼ばれる個別生産的なフロー
- 小規模なバッチフロー
- 大規模なバッチフロー
- ライン製造過程
ただし、技術革新等によって犠牲具合を少なくするなどの企業努力が可能です。
プロセスの計量にあたり、以下の要素(process metrics)が導入されます。
- プロセスタイム(P/T; 各過程における処理時間)
- サイクルタイム(C/T; 処理時間の平均)
- キャパシティ(能力; 単位時間あたりに処理可能な製品数)
たとえば、ピザ製造過程において、ピザ窯で一度に2枚のピザが焼けて、焼成時間が20分のとき、P/Tは焼成時間の20分ですが、20分に2枚=理想的には10分に1枚焼けるのでC/Tは10分となります。キャパシティは、1時間あたり6枚です。
ピザの製造過程では、さらにトッピングや生地作成の工程があり、これらを組み合わせるとき、ボトルネックはC/Tのもっとも長い工程(=キャパシティのもっとも低い工程)となり、ボトルネックの能力を超えるスピードで生産しようとすると、前工程ではブロッキング(生成品の滞留)が、後工程ではスターべーション(仕事のない状態)が、それぞれ発生します。
2011-10-26
● [MBA][講義メモ][OTD] 組織の拡大と縦割り化(2)
今回は、大組織について考えます。たとえば、Wal-Mart(日本ならイオンのほうがピンと来るでしょうか)の利点と欠点とは何でしょうか。
- 利点
- 規模の経済(economies of scale)
- 強い影響力
- 欠点
- サプライヤに値下げ圧力などネガティブな影響
- 市場独占による顧客側の不利益
- 大企業病
今回授業で取り上げられたケース*1では、アメリカの大手ホームセンターであるHome Depot(NYSE:HD)における取り組みが紹介されます。Wal-Martが大企業としての利点を活かしているのに対し、Home Depotでは、どちらかというと弊害が目立ちます。
企業は、以下のような理由で、拡大しようとします。
- さらなる利益の追求
- 「環境」をコントロールするため
- 規模の経済
- 能力の向上
- 顧客サービスの改善
拡大するにつれ、以下のような弊害も出てきます。
- 大企業病(bureaucracy; 縦割り、の方が正確?)
- 能力の固着(stretched competene)
- カルチャーやcommitmentの非共有
ここで、bureaucracy が取り上げられます。bureaucracy(官僚主義、大企業病、…)とは、すべての職務が規則により専門化されているシステム、と定義されます。このbureaucracyにも利点と欠点があります。
- 利点
- 正確
- 人的資源の管理の容易さ
- 外的変化からの組織の保護
- 欠点
- 意志決定の遅さ
- 優柔性の欠如
しかし、一般的には bureaucracy の利点よりも欠点の方が目立っており、それは洋の東西を問わないようです。
*1 Renovating Home Depot. 2009. Businessweek, 3/6. http://www.businessweek.com/magazine/content/06_10/b3974001.htm
2011-10-27
● [MBA][講義メモ][MSP] ボトルネックとリトルの法則
ボトルネック
ボトルネックは、もっともサイクルタイムの長い工程を指します。ここに資源を割り当てることにより、サイクルタイムを短くし、全体としてのサイクルタイムを改善することができます。換言すれば、ボトルネック以外の工程に資源を投入しても、全体のサイクルタイムは改善されません。
リトルの法則(Little's Law)
在庫として工程上にある製品数(I)、工程のプロセスタイム(T)、スループットレート(R)が与えられたとき、I = T * R という関係が成り立つ、というものです。
たとえば、携帯電話会社のT-mobile社の顧客数が1140万人、月々の解約率 3.0% が与えられたとき、I=1140万人、R=1140万人×3.0%=34.2万人/月、とすると、T = I / R = 33.3か月となり、平均的な契約期間が33か月とわかります。
リトルの法則は、注文の待ち時間、物流、カスタマーサービスの所要時間、キャッシュサイクルなどにおける平均的な滞留時間を、時間そのものを計測することなく推定するための法則、と言い換えることができます。